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当研究会についてConcept

Greetingご挨拶

2021年4月1日

全国公的扶助研究会

会長 吉永 純

ご挨拶

全国公的扶助研究会は、全国の生活保護ケースワーカーをはじめ、福祉事務所などの行政機関や民間の医療機関、福祉施設や当事者団体など、貧困問題と向き合い、公的扶助実践の交流や向上に取り組む福祉関係者で構成する自主的な研究会です。1965年に福祉事務所の社会福祉研究サークルの全国組織として結成され半世紀余りの歴史をもっています。

現在、日本の貧困率は15.4%(2019年国民生活基礎調査)と市民6.5人に1人(人口では1947万人)が貧困な生活を強いられています(貧困率とは、一人暮らしで可処分所得月額10万6千円未満(4人暮らしでは同21万2千円未満)で生活している人の人口に占める割合)。こうした貧困の高止まりを要因として、生活保護利用者は数で制度発足後近年は高い水準で推移(生活保護利用者数205万人、保護率:1.63%、2020年12月)していますが、貧困とみなされる層のうち1割程度しか生活保護では救済されていません。

しかし、こうした生活困窮者や生活保護利用者の増加に対して、生活保護ケースワーカーの配置が追いつかないため、法律で決められている保護世帯80世帯(郡部では65世帯)に対して1人のワーカーの標準配置数が守られず100世帯以上を担当するワーカーが珍しくありません。また人事異動が頻繁に行われるため支援の専門性を確保・蓄積することが困難になっています。こうした悪条件の下で、貧困の拡大と国の生活保護抑制基調の政策との板挟みになりながら、日夜、貧困と向きあっているのが生活保護ケースワーカーをはじめとする関係者の実状です。

私たちは、貧困が拡大している現代だからこそ、すべての市民に憲法25条が基本的人権として定めた健康で文化的な最低限度の生活を保障するとともに、その人らしい人生を歩んでいただくための支援をしなければならないと考えます。生活保護の仕事は、実施要領という国の通知だけでも膨大な量に上り、理解するだけでも大変です。また貧困に至る原因は多岐に及んでいますから、それぞれの要因に対して、関係機関と連携した、最新の適切な支援が求められています。したがって、私たち生活保護の関係者は、他の領域にも増して、よりよい実践のために研究、研鑚し、交流し、つながることが求められています。

全国公的扶助研究会は、利用者本位の豊かな実践目指して、全国から500人が集まるセミナーを毎年各地で開催するとともに、手作りの『季刊公的扶助研究』誌により生活保護や公的扶助実践に関する様々な情報を発信しています。また時宜に見合ったシンポジウムやケースワーカー向けの研修会、さらに各種出版物など多彩な活動を展開しています。

特にこの数年の活動では、第1に、2017年第50回全国セミナー開催を記念して、『よくわかる生活保護ガイドブック1Q&A生活保護手帳の読み方・使い方』、『同2Q&A生活保護ケースワーク支援の基本』を発刊し、第2に、2018年には、当会も協力してきました、柏木ハル子さん作『健康で文化的な最低限度の生活』のTVドラマ化が実現し、生活保護ケースワーカーの仕事を内外に発信することができました。
また、2020年度はコロナ禍のため、全国セミナーやブロックセミナーを対面で開催できないという困難な状況の下で、オンラインによる公的扶助セミナーを随時開催し、生活保護実践に役に立つ取り組みを行ってきました。

みなさん、貧困に苦しむ利用者を支援し、豊かな生活保護実践を行うためにご一緒に活動しませんか。きっと素晴らしい実践に目を開かれ、新たな仲間と出会えると思います。よろしくお願いいたします。