Greetingご挨拶
2025年6月1日
全国公的扶助研究会
会長 中村 健
ご挨拶
全国公的扶助研究会は、全国の生活保護ケースワーカーをはじめ福祉事務所などの行政機関や、民間の福祉従事者、保健医療領域の実践者、司法や居住関連の方、当事者支援に携わる方などで構成された自主的な研究会です。1965年に福祉事務所の社会福祉研究サークルの全国組織として結成され半世紀余りの歴史をもち、貧困問題と向き合い、公的扶助実践の向上や交流に取り組み続けています。
現在、日本の貧困率は15.4%(2022年国民生活基礎調査)と市民6.5人に1人が貧困な生活を強いられています(貧困率とは、一人暮らしで可処分所得月額10万6千円未満、4人暮らしで同21万2千円未満で生活している人の人口に占める割合)。こうした貧困の高止まりを要因として、生活保護利用者は数で制度発足後近年は高い水準で推移(生活保護利用者数200万人、保護率:1.62%、2025年3月)していますが、貧困とみなされる層のうち1割程度しか生活保護を利用できていません。
こうした生活困窮者や生活保護利用者の増加に対して、福祉事務所の人員配置が十分ではなく、ケースワーカー1人あたりの担当世帯数(法律上の標準数は市部で80世帯、郡部で65世帯)が100世帯以上となっている福祉事務所も珍しくありません。実施要領としてまとめられた国の通知は膨大な量に上り、理解することも大変です。また人事異動が頻繁に行われるため支援の専門性も確保・蓄積されにくい状況です。こうした悪条件の下で、貧困の拡大と国の生活保護抑制基調の政策との板挟みになりながら、日夜、貧困と向きあっているのが生活保護ケースワーカーをはじめとする関係者の実状です。
私たちは、貧困が拡大している現代だからこそ、憲法25条が基本的人権として定めた健康で文化的な最低限度の生活をすべての住民に保障するとともに、その人らしい人生を歩んでいくことができるような支援をしなければならないと考えます。また貧困に至る原因は多岐に渡るため、それぞれの要因を把握し、関係機関と連携した支援が求められます。したがって、私たち生活保護の関係者は、他の領域にも増して、よりよい実践のために研究、研鑚し、交流し、つながることが求められています。
全国公的扶助研究会は、利用者本位の豊かな実践を目指して、全国規模の公的扶助研究セミナーを毎年開催するとともに、手作りの『季刊公的扶助研究』誌により生活保護や公的扶助実践に関する様々な情報を発信しています。また時宜に見合ったシンポジウムやケースワーカー向けの研修会、さらに各種出版物の発行など多彩な活動を展開しています。
特にこの数年の活動では、第1に、2017年第50回全国セミナー開催を記念して、『よくわかる生活保護ガイドブック1 Q&A生活保護手帳の読み方・使い方』、『同2 Q&A生活保護ケースワーク支援の基本』を発刊し、第2に、2018年には、当会も漫画製作段階から協力してきた、柏木ハル子さん作『健康で文化的な最低限度の生活』のTVドラマ化が実現し、生活保護ケースワーカーの仕事を内外に発信することができました。
また、2020年度はコロナ禍のため、全国セミナーやブロックセミナーを対面で開催できないという困難な状況の下で、オンラインによる公的扶助セミナーを随時開催し、生活保護実践に役に立つ取り組みを行ってきました。
みなさん、貧困に苦しむ住民を支援し、豊かな生活保護実践を行うために私たちと一緒に活動しませんか。全国にいる仲間たちがあなたのご参加をお待ちしています。